プロの舞台俳優として劇団に所属。ある日舞台に立ちながら「今のままでいいのか?」と自問自答するようになり、もう一度、自分の演技や演劇に対する考えや向き合い方を見つめ直しました。その先に見えたのは・・・

大野さんの簡単な経歴を教えてください。

高校を卒業後(大阪芸術大学在学中)に、プロの児童劇団に入団をしまして、約4年間、プロの舞台俳優として、全国の舞台に出演をしました。その後、東京にある老舗劇団の研究所や演劇科で有名な大学(桐朋学園芸術短期大学)で、演劇の歴史を学んだり、演技の基礎・理論を学びました。現在は、大学院で主に幼児教育(子どもの表現等)について、研究をしながら、表現講師として、活動をしております。

プロの舞台俳優として経験してから、また演劇や演技について学ぼうと思った経緯があれば教えてください。

プロの舞台俳優として、劇団に所属していた頃は、舞台に立ちながら、お給料を頂ける環境に、とても感謝していましたが、舞台をただこなしていく毎日に、本当に、今のままで良いのか?と自問自答をするようになりました。

なぜ今のままでいいのかと考えるようになったのですか?

演技を行っていくテクニックなどは、現場の中で日々、習得していくことはできますが、演劇の歴史や背景など、”深さ”までは習得していくことは、なかなかできないと思うようになりました。だから、一度、自分の演技や演劇に対する考えや向き合い方を見つめ直したいと思ったんです。

実際に他の劇団や演劇の大学で、学んでみてどうでしたか?

毎日が、葛藤の日々でした。自分は、今まで何をやってきたのだろうか?と。演出家の先生とは対立するし、新しい仲間とも意見が合わず、演劇自体を辞めようとは一度も思わなかったですが、本当に色々な意味で、悩みました。だけど、大学4年生(桐朋学園芸術短期大学専攻科演劇専攻在籍中)の頃から、自分の進みたい方向性が、決まり出したんです。

進みたい方向性とは?

演劇的手法を使って、子どもやお年寄り、障がい者(児)向けに、ワークショップや表現活動を行いたいと思うようになりました。

子どものほかに、お年寄りや障がい者(児)向けにも、ワークショップや表現活動を行いたいと思った理由はあるんですか?

大学3年生(桐朋学園芸術短期大学専攻科演劇専攻在籍中)の時に、高齢者介護の仕事を始めました。その現場(お年寄りの方々と接する中)で、演劇の世界で養ってきた表現やコミュニケーション能力が非常に役立つなと実感しました。又、高齢者介護のほかに、障害福祉や保育の現場にも携わりましたが、そこでも、演劇や表現の可能性を非常に感じました。

なるほど、だから大学院でも幼児教育のコースを選ばれたんですね。

現在、通っている大学院は、幼児教育に限らず、高齢者、障がい者(児)、心理、社会学、教育など、本当に様々なことを学べたり、研究ができています。そして、日々の大学院での学びを表現講師の実践の中でも、しっかりと活かすことができています。

次に、未来表現教育ラボを立ち上げた経緯などがあれば教えてください。

子どもからお年寄り、障がいの有無、国籍に関わらず、誰もが、”キラキラ”、”イキイキ”できる空間を創りたかったんです。大学院の指導教授から、”表現は等価である”という言葉を教えてもらったんですが、本当にその通りだなと思います。指導教授から教わった言葉を、そのまま実現したいと思い、立ち上げました。

さまざまな現場で、表現をされる機会があると思いますが、大切にしていることなどはありますか?。

私は基本的に、ルールや制限を設けません。あとは、待つ姿勢を大切にしているため、〜しましょうなどの強制もしません。そして、事前に今日は、こんなワークショップや表現活動にしようと考えますが、当日の雰囲気や反応によって、ガラッと内容を変えたりしています。

ルールや制限を設けなかったら、例えば子どもだと自由に動きすぎたりしませんか?

質問の答えになっているか分かりませんが、例えば、私は子どもと接する時に、子どもというよりかは、”人”として、接するようにしています。又、障がいを抱えている方と接する時は、障がいをその人の”個性”として、受け止めています。どんな人でも、しっかりと向き合えば、ルールや制限などを設けなくても、こちらを必ず見てくれるようになります。これが、”待つ姿勢”です。福祉や保育等の様々な現場で、ワークショップをやらせて頂く機会がありますが、”待たずに、先にルールを設ける、声かけをする”現場が多いと最近、特に感じます。又、その日の活動内容を事前に作って、それ通り(枠組みの中のみ)に実施するというのも、ご本人が、それを望んでいるのか?やらされているのでは?と感じる瞬間があります。だから、私のワークショップや表現活動では、その瞬間に、目の前にいるその人が何をしたいか?を常に考えて、実施するように心がけています。

ルールや制限を設けずに、ご本人がやりたいことをして頂く。それを実現していくためには、やはり信頼関係が大切なのですね。

はい、仰る通りです。”信頼関係”です。現在、私は学童クラブを中心に、活動をしていますが、月1,2回しか行かない学童クラブの子どもたちとも、信頼関係の構築をとても大切にしています。子どもたちからしてみれば、たまに来て一緒に遊んでくれる男の人だ。と思われているだけかもしれませんが、それで、全然良いんです。ただ、たまにかもしれないけれど、一回、一回、子ども一人ひとりと向き合うことができれば、子どもたちは、月1,2回だけでも、表情や表現が、”キラキラ”、”イキイキ”としてきます。そして、そんな子どもたちの姿や様子を見て、スタッフ(専門職)の皆さまの表情がニコッとなる。それが、表現のエネルギー、パワーだと考えています。

最後にメッセージや伝えたいことがあれば教えてください。

はい、本日、インタビューの中でお話をさせて頂いたことは、未来表現教育ラボの活動のほんの一部分ですが、普段、私が考えたり、思ったりしていることを率直にお話させて頂きました。実際に、どのような感じで、表現活動やワークショップをするのか?少しでも気になって下さったら、お気軽に、お問い合わせやご連絡を頂ければ嬉しいです。これからも、私は、表現を通して、たくさんの方達と向き合い続けていきたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。